大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

宇都宮地方裁判所 昭和57年(ワ)254号 判決

原告

佐藤五郎

被告

関東自動車株式会社

ほか一名

主文

一  原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自九四五二万八六六三円及びこれに対する昭和五七年六月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五五年七月一六日午後五時一五分ころ

(二) 場所 宇都宮市戸祭三丁目九番二二号先宇都宮市医師会館前バス停留所

(三) 事故車両 大型乗合自動車(栃2い1647、ワンマンバス、以下、本件バスという。)

(四) 運転者 被告石島慶一(以下、被告石島という。)

(五) 被害者 原告

(六) 事故の態様及び傷害の結果

原告は、前記バス停留所から被告関東自動車株式会社(以下、被告会社という。)和尚塚線宇都宮駅行の本件バスの中央(後)部乗車口(以下において、その扉(以下、ドアともいう。)ばかりでなく乗車口自体をも中扉ということがある。)から乗車したが、満員であつたため一段目の踏段(以下、ステツプともいう。)から二段目の踏段になかなか上がることができなかつた。原告は、二段目の踏段に上がりながら身体をバスの進行方向に向けたところ、中扉が閉まり、閉まると同時に発車の衝撃又は扉の閉まる衝撃があつたが、このとき扉が再び開いたため、原告は平均を失つて路上に横倒しの状態で落下し、歩道と車道の間の縁石に左腕を打つて左上腕骨骨折の傷害を負つた。

2  被告らの責任

(一) 被告会社は本件事故車両の所有者であり、これを自己のため運行の用に供したものである。

(二) 本件事故は、運転者である被告石島の次のような過失により発生したものである。

被告石島は、原告がバスの中扉の一段目の踏段に両足を乗せ、片足を二段目の踏段に乗せようとしたときに扉を閉める操作をした。

本件バスにおいては、後扉(本件バスにおける中扉)の踏段上の乗客を運転者が確認する装置として、直接確認方式と間接確認方式が併用されることになつており(昭和四八年一月三一日付運輸省自動車局整備部長から各陸運局長あて通達「ワンマンバス構造規格について」)、間接確認方式としての光電リレー装置は、乗客が中扉の踏段上にいる場合には、扉が閉まらない装置とすることが義務付けられているところ、本件バスにおける光電リレー装置は、乗客が踏段上にいてもその位置いかんによつては光電を遮断しない場合があつて扉は閉まつてしまうのであり、乗客が踏段上にいる場合に扉が閉まらない装置としては不完全であり、被告石島はこのことを知つていたし、中扉から最後に乗つた人が老人である原告であつたのであるから、被告石島としては特に注意をして、原告が踏段から床に上がつたのを確認したうえ扉を閉める操作をすべきであつた。ところが、石島は、右のような措置を講ずることなく、原告が一段目の踏段から二段目の踏段に上がろうとしたときに扉を閉めるためのレバー操作をし、扉を閉めてしまつたのである。この為に、被告石島の第一の過失がある。

中扉が完全に閉まり、原告は、二段目に上がつて身体の向きをバスの進行方向にかえるとともに、右手でつかまり棒につかまつた。ところが、このとき「ガクン」という衝撃がしたのでいつたんつかまつた手を放した。このとき、閉まつていた扉が突然開いたので、原告はバスから転落したのである。踏段上にいる乗客は、非常に不安定な状態にあり、扉が閉まれば安心し、つかまり棒につかまろうとしていたのがつかまらない場合もあるし、いつたんつかまつても手放す場合もある。したがつて、運転者としては、乗客が踏段上にいる場合には、いつたん閉めた扉は絶対に開けるべきではなかつたのである。しかるに被告石島は、いつたん閉めた扉を開けてしまい、その結果、踏段上にいて非常に不安定な状態にあつた原告が転落したのである。この点に第二の過失がある。

また、被告石島は、原告がバスから転落するのに全く気が付いていない。そうすると、被告石島は、中扉の踏段上にいる原告を、平面鏡と凸面鏡による直接確認方式によつて確認すべき注意義務をも欠いていたことが明らかである。

3  損害

(一) 入通院関係

原告は前記傷害の治療のため宇都宮市松原二丁目高瀬整形外科医院に昭和五五年七月一六日から同年一〇月三〇日まで三か月半(実日数四七日)通院し、同五五年一一月一一日から同五六年五月三日までの一七四日間は宇都宮市中央本町栃木県済生会宇都宮病院に入院し、同五六年五月一五日から同年一二月一四日までの七か月(実日数一八日)は同済生会宇都宮病院に通院した。

(1) 治療費 イ 高瀬整形外科医院 四三万四五〇〇円

ロ 済生会宇都宮病院 六七万二五〇五円

(2) コルセツト代 七万四一〇〇円

(3) 済生会宇都宮病院入院室料 七三万一五〇〇円

(4) 入院中の雑費 一二万一八〇〇円

一日につき七〇〇円として一七四日分

(5) 通院交通費 バス代相当分

イ 高瀬整形外科医院 二万〇六八〇円

一往復四四〇円として四七日分

ロ 済生会宇都宮病院 三九六〇円

一往復二二〇円として十八日分

(二) 慰藉料 一七二万円

原告は、前記傷害による入・通院によつて著しい精神的苦痛を被つたほか、前記傷害による後遺症が発生し、その後遺症の等級は自賠法施行令別表第一四級と認定され、右後遺症によつても精神的苦痛を被つている。右精神的苦痛を金銭に評価すると、次のとおりとなる。

(1) 入院による慰藉料 九五万円

(2) 通院による慰藉料

(高瀬整形外科医院) 一五万円

(済生会宇都宮病院) 六万円

(3) 後遺症発生による慰藉料 五六万円

(三) 逸失利益 九三五〇万五二一八円

原告は、皮膚科、泌尿器科の医師であるが、明治四一年七月一日生れで本件事故当時満七二歳と一五日であつた。この年齢では自賠責保険(強制)及び自動車保険(任意)の支払基準によると、向後四年間はなお就労可能であるところ、原告は前記左上腕骨骨折の傷害により済生会宇都宮病院に入院中、腰から上に重いギブスをはめ寝たきりで腰が動かせなかつたため、従来軽度で仕事をするには差し支えなかつた脊髄分離すべり症が悪化し、このため同病院退院後は治療行為を行なうことができなくなり、医業を廃止せざるの止むなきに至つた。

原告の就労可能年数は右のようになお四年間はあるところ、これを三年六か月間として、逸失利益を次のように計算するのが相当である。

(1) 原告の収入は、保険診療報酬、自由診療報酬及び看護学院講師手当とからなつている。このうち保険診療報酬は昭和五〇年から昭和五四年までの五か年間において左のとおりであつた。

年度

報酬額

伸び率(パーセント)

昭和五〇年

五〇六九万一八六二円

一〇〇・〇〇

昭和五一年

五三〇〇万七三三一円

一〇四・五七

昭和五二年

五五三九万八四二九円

一〇四・五一

昭和五三年

六一二五万九四二九円

一一〇・五八

昭和五四年

六五六一万九二一〇円

一〇七・一二

平均

一〇六・七〇

自由診療報酬は右同様五か年間において左のとおりであつた

年度

報酬額

経費

昭和五〇年

四二万五七二〇円

一七万四七四九円

昭和五一年

六四万九八五〇円

二六万二一七三円

昭和五二年

四九万五八八〇円

昭和五三年

五九万二四一〇円

二五万八三四七円

昭和五四年

五六万八〇五〇円

二五万七五五四円

平均

五四万六三八二円

経費率

四二・六パーセント

看護学院講師手当は年間一九万六〇〇〇円である。

(2) 次に必要経費であるが、保険診療報酬分の経費は租税特別措置法第二六条により最も新らしい経費率(昭和五五年改正)を適用すると五二パーセント+七四〇万円(この経費率の中には、人件費、薬品代、消耗品費、雑費、減価償却費その他をすべて含んだものとして考えられている。)となり、自由診療報酬分の経費は、上記(1)の自由診療分の報酬額に対する経費の平均(ただし昭和五二年を除く。)をとつて四二・六パーセントとなり、看護学院講師手当の経費は交通費、雑費などで一〇パーセントとみた。

(3) 原告の保険診療報酬の伸び率は前記のとおり年平均一〇六・七〇パーセントとなつているが、これを少な目に押さえ年平均一〇三パーセントは本件受傷後三年六か月間にわたつて維持されるものと思料される。以上により原告の逸失利益を計算すると別表のとおりとなる。

4  損害の填補

原告は、以上の合計九七二八万四二六三円の損害を被つたのであるが次のとおり填補を受けたのでこれを差し引くと、九四五二万八六六三円が残損害ということになる。

イ 自賠責保険金 一二〇万円

ロ 同後遺障害保険金 七五万円

ハ 被告会社からの支払 八〇万五六〇〇円

5  よつて、原告は、被告会社に対しては自賠法三条に基づき、被告石島に対しては民法七〇九条に基づき、九四五二万八六六三円及び不法行為の後の日である昭和五七年六月三〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各自支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の(一)から(五)の事実は認める。(六)のうち、原告が本件バスに乗つたこと、バスから転落して傷害を負つたことは認める。扉が閉まり、閉まると同時に発車したとの点は否認し、その余の事実は知らない。

2  同2の(一)の事実は認める。(二)の事実は否認する(詳細は抗弁のとおり。)。

3  同3の各事実は知らない。なお、逸失利益については争う。

(一) 逸失利益の算定期間は、次の点において不当である。

(1) 原告が診療を受けた期間は、昭和五五年七月一六日から昭和五六年一二月一四日までであり、右期間の診療によつて症状は固定している。

(2) 右診療期間中、昭和五六年五月一五日以降の七か月間は、実診療日数一八日(月平均二・六日)にすぎず、その内容もマツサージ・電気療法程度であり、稼働不能の状態ではない。

(3) 原告の職業が外来専門の皮膚・泌尿器科医師であり、体力を必要とするものではないから、昭和五七年一月以降の原告の後遺障害(肩の軽度の運動障害)は、稼働には影響がなかつたものである。

(4) 以上、原告は、本件事故による傷害によつて稼働しえなかつたのではなく、原告自身の個人的意思によつて稼働しなかつたのである。

(二) 原告のような高額所得者の場合、逸失利益の算定にあたつては、税額を所得額より控除すべきである。

4  同4の損害の填補額は認める。

三  被告らの抗弁

1  本件事故については、被告らは本件バスの運行に関し注意を怠つておらず、被害者である原告に過失があつたのであり、本件バスに構造上の欠陥又は機能の障害はなかつたのであるから、被告石島が民法七〇九条の責任を負わないことはもちろん被告会社も自賠法三条の責任を負わないのである。その詳細は以下のとおりである。

(一) 本件バスには、構造上の欠陥又は機能の障害はなかつた。

(1) 本件バスは、本件事故の前後を通じて正常に運行しており、何らの故障もしていない。

(2) 原告は、本件バスにおいては、「後扉の踏段上の乗客を運転者が確認する装置」として、直接確認方式と間接確認方式を併用することとされている旨主張する。

本件バスは、昭和四一年製作であり、「道路運送車両の保安基準」(昭和二六年七月二八日運輸省令代六七号)及び運輸省自動車局整備部長から各陸運局長あて昭和四五年九月二八日自車第八四九号通達が適用されるものであるところ、右通達によると、「後乗り前降り方式のバスで引戸又は後ヒンジ扉のものにあつては、間接確認方式を省略することができる。」とされているのである。このようなバスにあつては、構造上、後扉の踏段上の乗客の有無は、直接確認することが可能なのであり、それが不可能又は困難の場合に備えて間接確認方式を併用しているのである。そして、踏段上の乗客を確認するのは、原告が主張するような転落防止のためではなく、閉扉に際して乗客を扉に挟んでしまうことを回避するためである。

本件バスは後乗り前降り方式で、かつ、引戸式後扉であり、天井灯及び平面鏡、凸面鏡による直接確認方式を備えているから、間接確認方式を備えることは義務付けられているのではない。したがつて、そもそも、間接確認方式としての光電リレー装置に構造上の欠陥があるか否かを議論する余地も必要性もないのである。

(3) 原告は、間接確認方式(本件においては光電リレー装置)は踏段上の乗客の転落防止のため極めて重要であるところ、本件装置は、乗客が踏段上にいるときに扉が閉まつてしまう場合があるから不完全なものである、と主張する。

しかしながら、右に指摘したように、本件バスにおいては間接確認方式は不要であるばかりか、右方式は、踏段上の乗客が扉に挟まれないようにし、あるいは後記のようにアクセルインターロツクと連動して、扉が開いたまま発車しないようにするための装置なのであつて、そもそも乗車中の乗客の転落防止を目的とするものではないのである。光電リレー装置を万全のものとしても、乗客の転落自体は防止しようがないのである。また、本件バスに装備されている二点間リレー方式は運輸省によつて公認され、業界一般において広く採用されているのであつて、不完全であるとか、構造上の欠陥があるとは、とうていいえない。

なお、扉が閉まつてしまうということが、転落防止の障害となることはありえないのである。

(4) 原告は、いつたん閉まつた扉が再び開けば踏段上の乗客が転落する可能性があるのであり、装置として極めて危険である、と主張する。

しかしながら、まず、扉が完全に閉まつてしまうと光電リレー装置が機能することはない。すなわち、光電リレー装置により再び扉が開くことはないのであり、運転者において運転席右側にある開扉レバーを操作して「開」にしなければならないのである。本件において被告石島は右の操作をした事実はないのである。

扉が完全に閉まり切つていない場合には、光電が遮断されることによつて、反転して開く構造となつている。これは、踏段上に乗客がいるときは、アクセルインターロツク装置と連動して発車できないようにするために絶対に必要なのである。これを閉まりかけたら再び開くことがないようにしたのでは、乗客が扉に挟まれ、あるいは挟まれたまま発車するなど、かえつて極めて重大な危険を招来することになるのである。

(5) バスに乗降中の転落事故を防止する唯一の方法は、つかまり棒にしつかりつかまつて乗降することであり、それ以外に防止方法はない。本件バスには、入口両脇、踏段両脇、床両脇、踏段上と、考えられる場所には全てつかまり棒が設置されているのである。

(6) 以上のとおり、本件事故当時、本件バスには、原告の指摘する光電リレー装置に欠陥や障害はなく、他に本件事故と関連する構造上の欠陥又は機能の障害はなかつた。

(二) 本件事故は、原告自らの過失によつて発生したものである。

原告は、停車中の本件バスに乗り込もうとして、開扉中の中扉から踏段を二段上がり、二段目の踏段上において正面に身体の向きを変えようとした。このような場合、転落事故を防止する唯一の方法は、つかまり棒にしつかりつかまることである。原告は、高齢(当時七二歳)であることに加えて、左腕に鞄を抱え、右手に雨傘を持つていたのであるから、本件バスに設置されている入口両脇、踏段両脇、床両脇、踏段上部等のつかまり棒にしつかりつかまり、自己の身体の平均を失わないようにすべき注意義務があるのにこれを怠り、自らの平均を失つて転落したものである。

(三) 被告らは、本件バスの運行に関し、注意を怠つていない。

(1) 原告の主張する、いわゆる第一の過失については以下のとおり理由がない。

まず、本件バスには、そもそも間接確認方式の装置は義務付けられていない。

本件光電リレー装置は、決して不完全なものではなく、広く公認されているものである。

右のとおりであるから、被告石島も、本件光電リレー装置が不完全なものであるとの認識はない。

先に記したように、直接確認方式及びそれを補助するための間接確認方式は、あくまでも、乗客を扉に挟んだまま発車したりすることを防止するためのものであり、転落防止のためのものではない、したがつて、運転者としては、右両方式を活用して、右のトラブルが起きていないことを確認すればよく、また、それ以上のことは必要ない。

被告石島は、たしかに、原告が踏段上にいるうちに扉を閉める操作をした。しかし、その前にサイドミラー及びバツクミラーにより中扉の乗客が全員乗り込んだことを確認している。そして、原告が踏段上にいるため扉が閉まらず、扉が反転する度に扉脇の予告ブザーがビービーと鳴つて扉の開閉を踏段上の原告に知らせ、被告石島は「中のお客さんは、前の方へつめて下さい。」「ステツプにお立ちの方は、上にあがつてください。」と放送している。右のように、被告石島は、直接確認方式及び間接確認方式に期待されているところの挟み込みの防止、開扉発車の防止という目的を達成するための措置を完全に尽くしているのである。

(2) 原告の主張するいわゆる第二の過失はない。

(イ) そもそも、被告石島が、いつたん閉めた扉を開く操作をしたことは絶対にないのである。したがつて、原告の主張は前提を欠くものである。

本件において扉が開いたのは、先にも主張したとおり、扉が閉まる途中で再び光電が遮断されたため反転して開いたからである。その際は予告ブザーがビービーと鳴る。乗客の心理としては、扉が閉まりかけたときには挟まれまいとしてかえつて防禦態勢をとるのが自然である。安心して手を放したりするのは、扉が完全に閉まつた後のことである。

(ロ) 本件事故当時、本件バスはまだ停車中であり、発車していない。原告は、扉がいつたん閉まり、バスが発車したのち再び扉が開いた旨主張するけれども、そのような事実はない。

本件光電リレー装置は、扉がいつたん閉まつてしまうとたとえ乗客が光電を遮断しても絶対に再度開くことはない。いつたん閉まつた扉を開けるには運転席横にある開扉レバーを「開」にするほかないのである。ところが、本件においては、被告石島は開扉レバーを「開」にした事実はないのである。したがつて、原告が、いつたん閉まつたと感じたのは、厳密にいえば、原告が踏段上でたまたま光電を遮断しない位置に立つたため扉が閉まりかけたところ、身体を前方に向ける際に位置がかわつたために光電が遮断される状態となり、それまで閉まりかけていた扉が反転して開いたからである。このように扉は完全に閉まつたのではないから、開扉発車防止装置としてのアクセルインターロツクが機能したままなのであり、発車することはありえないのである。

(ハ) 原告は、バスの進行方向に向いて、右手でつかまり棒につかまつていたが、ガクンという扉が閉まつたときの衝撃で、いつたんつかまつた手を放してしまい、転落したと主張する。

しかしながら、右の「ガクン」というのは、バスの発車の衝撃ではないことは先に主張したとおりである。右「ガクン」というのは、扉が閉まるときのドアエンジン及びドアの動く音ないしは感触にすぎず、「衝撃」などという大げさなものではなく、それが起因となつて転落するなどということはありえないのである。

(ニ) 被告石島が、平面鏡及び凸面鏡による直接確認義務を尽したことは、先に主張したとおりである。

2  仮に、被告石島に何らかの過失があつたとしても、以上に指摘してきたところからすれば、右被告の過失は極めて軽微であり、大部分は原告の過失に起因するのである。右の点を損害額の算定にあたり斟酌すべきである。

四  抗弁に対する認否及び反論

1  抗弁1、2はすべて争う。

2  本件バスには、間接確認方式としての光電リレー装置が現に設置されているのである。設置されている以上、それが不完全なものであるならば、当然に構造上の欠陥にあたるというべきである。そして、間接確認方式を設置した場合、乗客が踏段上にいるときには、ドアエンジンと連動して扉が閉まらない装置を付けることが義務付けられているところ、本件バスの光電リレー装置は、乗客が踏段上にいる場合でも、その位置いかんによつては光電を遮断しない場合があつて扉が閉まつてしまうのであり、身体を動かすなどして光電を遮断する場所に位置すると、いつたん閉まりかけた扉が再び開いてしまうのである。右の点において欠陥があるものというべきである。

被告らは、本件バスに光電リレー装置を備え付けるのは、乗客の挟み込みの防止と開扉発車の防止のためであると主張するけれども、それのみに止るものではない。乗客の転落防止の機能をも兼ね備えていることが明らかである。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載されたとおりであるから、これを引用する。

理由

一  事故の態用並びに被告石島及び原告の過失の有無について

1  請求原因1のうち(一)から(五)までの事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、事故態様について検討する。

(一)  成立に争いのない乙第一五、第一六号証(以下において特に表示しない場合は成立に争いがない趣旨である。)、証人大野昌子、同手塚千代子、同石口清子の各証言、原告(第一回から第三回。以下、特に表示しないときは全供述をさす。)及び被告石島各本人尋問の結果、検証の結果を総合すると、次の各事実が認められ、右各証拠中、この認定に反する部分は、その余の部分に照らして採用できず、他に右認定を妨げるに足りる証拠はない。

すなわち、(イ)原告(当時七二歳)は、医師会館前停留所において、和尚塚線宇都宮駅行バス(本件バス)に、同バスの中扉から、乗客の一番最後から乗り込もうとしたこと、(ロ)当時、雨が降つており、また、本件バスの乗客は相当いて、車内は混雑していたこと、(ハ)原告は、その際、左脇に縦約二五センチメートル、横約三〇センチメートルの書類鞄を抱え、右手にこうもり傘を持つていたこと、(ニ)原告は、まず、乗車口の踏段(踏段は全部で二段ある。)の一段目に上がつたが、二段目に上がろうとしたときか、あるいは、上がつた直後に、扉が閉まりかけたこと、(ホ)そこで原告は発進を予測して身体を進行方向に向けようとしながら、床上の左右にあるつかまり棒のうち、向つて左のつかまり棒に右手でつかまつたこと、(ヘ)そして、二段目の踏段上で身体を進行方向に向けたこと、(ト)そのとき、扉が反転して開き、原告は左肩あたりから路上に転落し、歩道と車道の境の縁石に左腕を打ちつけ、左上腕骨骨折の傷害を負つたこと、が認められる。

(二)  中扉の開閉装置について、成立に争いのない乙第一二、第一三号証、証人吉成又次の証言、検証の結果、被告石島本人尋問の結果によれば、次の各事実が認められ、この認定を妨げるに足りる証拠はない。

すなわち、(イ)本件バスには、「ワンマンバスの構造規格について」(昭和四五年九月二八日自車第八四九号、昭和四八年一月三一日自車第五〇号各運輸省自動車局整備部長から各陸運局長あて通達)に基づき、中扉の開閉に関し、次の各装置が備え付けられていたこと

予告ブザー

開扉発車防止装置

a 乗降口の扉と連動するもの

b 開閉の状態を運転者席の運転者に表示する灯火

扉の踏段上の乗客を運転者が確認する装置

a 直接確認方式(平面鏡、凸面鏡など)

b 間接確認方式(光電リレー装置)

(ロ)右各装置の操作の手順及び機能は、次のとおりであること停車して、運転者が運転席横の開扉操作レバーを「開」にすると扉脇の予告ブサーが鳴り、その約〇・八秒後に扉が開き始めること

扉がいつたん開き始めてからは、その後完全に閉まるまでアクセルを踏むことができない状態になる(アクセルインターロツク)こと

客が乗降する際、踏段上の光電を遮断することとなり、その度に運転席の緑色の警報ランプが点灯すること

運転席横の操作レバーを「閉」にすると予告ブザーが鳴り、やはり約〇・八秒位後に扉が閉まり始めること

扉が閉まり切る前に、乗客が踏段上で光電を遮断すると、光電リレー装置の働きにより扉は直ちに反転して開くこと、その際にも予告ブザーがビービー鳴ること

扉が完全に閉まると、運転者が運転席横の操作レバーを「開」にしない限り再び開扉することはないこと、完全に閉まるとアクセルインターロツクが解除されてアクセルを踏み込めるようになり、発車ができるようになること

の各事実が認められる。

3  事故及び中扉の開閉装置の概略は、右のとおりであるが、当事者双方に争いがある点についてなお検討する。

(一)  まず、原告が、踏段を上がる際、鞄と傘をどちらの手にどのように持つていたかである。この点は、つかまり棒のつかまり方及び安定感に影響してくるところである。原告本人(第一回)は、左脇に鞄を抱え、左手に傘を持つていた旨供述するけれども、乙第一六号証によれば、原告は、事故から二か月位後の警察での事情聴取の際には、前記2の(一)の(ハ)の認定にそう供述をしているのであり、第三回の本人尋問の結果中においても、警察で当時覚えているとおりに述べた旨供述していることに照らすと、先の供述はにわかに採用できず、むしろ、右乙第一六号証により前記認定のとおりの持ち方であると認めるのが相当である。

(二)  原告は、中扉は一度完全に閉まつた旨主張し、原告本人及び証人大野昌子、同手塚千代子、同石口清子はこれにそう供述をする。

右2の(二)において認定した本件の扉開閉装置の機能からすれば、もし扉が一度完全に閉まつたのであれば、運転者である被告石島が運転席横の操作レバーを再び「開」にしない限り開かないはずである。しかしながら、被告石島は、そのような操作をしたことはない旨明確に供述するのである。右供述をはじめ、いつたん完全に閉まつた扉を再び開ける必要がある場合としては、乗客の衣類などが扉に挟まれた場合とか、さらに乗ろうとする客が来た場合などが考えられるところ、本件においては右のようないつたん閉めた扉を再び開かなければならないような事情があつたものと認めるに足りる証拠はないこと、また、検証の結果によると、乗客が踏段上に立つても、その位置いかんによつては光電を遮断しないことがあつて扉が閉まりかかり、その後、乗客が踏段上で動くことにより光電を遮断すると、いつたん閉まりかけた扉が反転して再び開くことがあること、閉まりかけた扉は、後約五センチメートル位で完全に閉まる位置まで来ていても光電が遮断されれば反転して開くこと、が認められること、等に照らすと、原告が乗車後、扉がいつたん完全に閉まつた旨の前記各供述はにわかに採用できず、結局、被告石島本人尋問の結果及び前記光電リレー装置の機能からして、被告石島は、原告が踏段上にいる間に扉を閉めるためのレバー操作をしたのであるが、その後、扉を再び開けるためのレバー操作をしてはいないこと、原告が踏段上で一時光電を遮断しない位置にいたので扉がほとんど閉まりかけたが、身体を動かし再び光電を遮断することとなつたので扉が反転して開いたものであること、が認められるのである。

(三)  原告は、つかまり棒につかまつたがバスが発車する際の衝撃かあるいは扉が閉まつたときの衝撃かはさておき、ガクンという衝撃を感じたので手を離し、平均を失つたところ、突然再び扉が開いたので転落した旨主張する。

まず、扉はいつたん完全に閉まりその後再び開いたのではなく、閉まる途中で光電が遮断されたため反転して開いたものである。このことは(二)において検討したとおりである。したがつて、前記2の(二)の(ロ)において認定したとおり、アクセルインターロツクが作動しており、発進は不可能であるといわざるを得ない。原告本人尋問の結果中には、発進した旨の供述があるけれども、右アクセルインターロツクとの関係及び右本人尋問の結果のその余の部分、被告石島本人尋問の結果、証人大野昌子、同手塚千代子、同石口清子の各証言、前記乙第一五、第一六号証に照らして採用できない。

そうすると、原告が「ガクン」と感じたのは、扉が閉まりつつある時、あるいは、反転して開きつつあるときのものと推認されるところ、検証の結果によると、扉の開閉によつては、身体が動くほどの衝撃は感じられないことが認められるのである。

4  以上の事実及び以下に認定する周辺の事実を前提として、被告石島の過失の有無について検討する。

(一)  判断の便宜上、原告の主張する第二の過失について検討する。原告は被告石島がいつたん閉めた扉を再び開けた点に過失がある、とするのであるが、先に認定したとおり、被告石島は、扉を閉めるためのレバー操作をした後再び開くための操作をしてはいないものと認められるのであるから、この点で理由がない。

(二)  そこで、原告の主張する第一の過失について検討する。

原告は、原告が踏段上にいる間に被告石島が扉を閉めるためのレバー操作をしたことを過失としてとらえ、その結果閉まつてしまつた、と主張する。

しかし、扉を閉めるための操作をし、その結果扉が閉まつた(実際には完全に閉まつたのではない。)ということを、本件原告の転落事故の過失行為としてとらえることは不可能である。なぜならば、扉が閉まるということはむしろ転落防止のための最善の措置だからである。

原告が主張するところは必ずしも明らかではないけれども、先に検討した光電リレー装置の機能等との関係でその趣旨を敷衍すると、本件バスにおける光電リレー装置は、乗客が踏段上にいても光電を遮断しない場合があつて扉が閉まりかかり、身体を動かすことによつて遮断することになると反転して再び開く可能性があり、反転して開けば踏段上の乗客は転落のおそれが大きいから、乗客が踏段上にいる間は扉を閉める操作をすべきではない、ということのようである。

先に検討してきたところによると、原告が主張するとおり、被告石島は、原告が踏段上にいる間に扉を閉めるためのレバー操作をしたこと、本件バスの光電リレー装置は踏段上の乗客の位置、姿勢いかんによつては原告が指摘したような状況になること(これが装置として不完全なものであるかどうかはしばらくおく。)、が認められるのである。

そして、たしかに乗客が踏段上にいる間に閉めることに比べると、床の上に上がつてから扉を閉める操作をする方が、乗客が踏段上に降りたりしない限り、扉が反転して再び開く可能性は少なく、したがつて、反転して開いた扉から転落する機会も少ないであろう。

しかしながら、(イ)先に検討したとおり(2の(二))、本件バスには、後扉の踏段上の乗客を運転者が確認する装置として直接確認方式と間接確認方式とが併用されているところ、乙第一二号証によれば、通達上、間接確認方式は、乗客が踏段上にいる場合には、ドアエンジンと連動して扉が閉まらない装置とすること、とされているのであり、右通達の文言自体、乗客がまだ踏段上にいる間に運転者において扉を閉めるレバー操作をする場合があることをある程度予定しているものと理解せざるをえないこと、(ロ)やはり、先に認定したとおり、扉を閉めるレバー操作をすると扉脇の予告ブザーが鳴り、また、光電が遮断されたりされなかつたりして扉が反転するたびにやはり予告ブザーが鳴つて、踏段上の乗客の注意を喚起すること、(ハ)本件当時バスは相当に混んでいたこと、したがつて、平面鏡、凸面鏡による直接確認方式によつては視界が妨げられる危険性があり、間接確認方式に相当頼らざるをえないこと、(ニ)乙第一二、第一五号証、被告石島本人尋問の結果及び検証の結果によれば、石島は、中扉からの乗客の乗り込みの状況についてサイドミラーによつて車外からの乗り込みの完了を確認し、次いで運転席前面左窓上部のバツクミラー(平面鏡)を通じて中扉上部の踏段上面確認用の凸面鏡に映つた踏段上の様子を見て最後の乗客が一段目の踏段から二段目に上がつたのを確認して、運転席横のレバーを「閉」に操作したこと、が認められること、(ホ)乙第一五号証及び被告石島本人尋問の結果によれば、被告石島は前記レバー操作をしたが、運転席の緑色ランプが点滅し、扉が閉まり切らないこと、すなわち、踏段上に乗客がいることを知つたので「中のお客さんは前の方へつめて下さい。」と放送しながら(被告石島本人尋問の結果中「ステツプにお立ちの方は上にあがつて下さい。」と放送した旨の供述は、右尋問の結果中のその余の部分及び乙第一五号証に照らして採用できない。)、乗客が床に上がるのを待つたこと、また、運転手は被告石島にかぎらず、ほぼ右のような措置をとるものであること、が認められることからすれば、被告石島が、乗客(原告)が踏段上にいる間に扉を閉める操作をしたからといつて、非難するには当らないものといわざるをえないのである。

なお、被告石島本人尋問の結果によれば、石島は、原告が転落する際の状況を平面鏡及び凸面鏡を通じて視認してはいないことが認められるけれども、右に検討してきたところからすると、そのことをもつて被告石島に踏段上の乗客についての直接確認義務懈怠があるともいえない。

さらに、本件においては、扉が反転して開いたこと自体と、原告の転落との間に相当因果関係があるとはいえないのである。すなわち、先に検討したように、本件バスは発信しておらず、したがつて発進及びその後の停止の衝撃があつたわけではないし、扉が閉まる際及び反転して開く際は身体に感ずるほどの衝撃はないのである。原告は、踏段上の乗客は、扉が閉まれば安心し、つかまり棒につかまろうとしていたのがつかまらない場合もあるし、いつたんつかまつても手放す場合がある、という。しかしながら、やはり先に認定したとおり、原告は、扉が閉まつた(もつとも完全に閉まつたわけではない。)後に、発進を予測して身体を進行方向に向けようとしながらはじめてつかまり棒につかまつているのであつて、原告が主張するような経過をたどつてはいないのであり、むしろ、いつたん閉まりかけたことにより緊張感を強めているのである。要するに、右に指摘した点からすれば、扉が開いたままの状態でもあるいはまた、本件のように閉める操作をしたためいつたん閉まりかけた後反転して開いた場合でも、事態に差異があつたものとは考えられずむしろいつたん閉まりかけた場合の方が乗客としては発進を予測するから転落のおそれは少ないともいえるのである。

右のとおり、扉が反転して開いたことと、原告の転落との間に相当因果関係があるものとは認め難いのである。

(三)  以上のとおり、原告が被告石島の過失として主張する点は理由がなく、他に、被告石島の過失を認めるに足りる証拠はない。

(四)  結局、本件事故については、原告の七二歳という年齢、右手に傘を持ち左脇に鞄を抱えていたことからくる不安定さ、当時雨が降つていたことから推認される滑り易さ、扉の開閉によつては身体に感ずるほどの衝撃はないこと、を始めとする以上で認定、検討してきたところを考慮し、前記2の(一)及び(二)の各冒頭掲記の各証拠を総合すると、原告自らが、身体の平均を失つて、たまたま反転して開いた中扉から転落したものと推認するのが相当であり、右各証拠中この推認に反する部分は以上で検討してきたところに照らして採用できず、他にこれを覆すに足りる証拠はない。

二  本件バスの構造上の欠陥又は機能の障害の有無について

次に、被告らが本件バスの運行につき注意を怠らなかつたか(被告石島に過失のないことは先に検討したとおりである。)、本件バスに構造上の欠陥又は機能の傷害がないか、について検討する。

1  原告は、本件バスの間接確認方式としての光電リレー装置には、構造上の欠陥又は機能の障害がある旨主張する。

たしかに、先に検討したとおり、通達上、間接確認方式は、乗客が踏段上にいる場合には、ドアエンジンと連動して扉が閉まらない装置とすること、とされているところ、本件バスの光電リレー装置は、乗客が踏段上に位置していても、その姿勢いかんによつては光電を遮断しないことがあり、その結果扉が閉まつてしまうことがあるのである。

そこで、右の点が構造上の欠陥又は機能の傷害に該当しないかどうか、該当するとして本件事故発生と関連しないといえるか否か、について検討する。

もし、乗客が踏段上にいる間はどのような位置、姿勢にあつても光電を遮断し、その結果扉が閉まらないという、間接確認方式として完壁なものであつても、転落を防止しうるとは考えられないのである。むしろ、扉が開いている時間が長ければ長いほど、転落の危険は増大するのである。そして、本件のようにいつたん閉まりかけて反転して開く場合でも、閉まりかけること自体は、転落の危険を少なくするはずであるし、反転して開いたことと本件転落との間に相当因果関係がないことは先に検討したとおりである。

乙第一二号証、証人吉成又次の証言、被告石島本人尋問の結果、検証の結果に弁論の全趣旨を総合すると、本件バスに設置されている光電リレー装置は、他のそれと異なるものではなく、ごく通常のものであることが認められる。なお、閉まる途中に光電が遮断されることによつて反転して開くことは、踏段上に乗客がいるときにはアクセルインターロツクと連動して発車できないようにするためにむしろ必要な機能であるというべきである。そうしないと、乗客が踏段上にいて扉に挟まれたまま発車することになるなど、かえつて危険な状態を招きかねないのである。

以上の諸点からすると、原告が主張する点は、本件事故に関連する構造上の欠陥又は機能の障害には該当しないものというべきである。

2  乙第一二、第一五号証、証人吉成又次の証言により真正に成立したものと認められる乙第二から第一一号証、右証人の証言、被告石島本人尋問の結果、検証の結果に弁論の全趣旨を総合すると、本件バスは、前記光電リレー装置以外の点についてもワンマンバスとしての通常の構造と機能を備えていること、被告会社及び被告石島ら運転者においては、所定の一か月点検、仕業点検等を繰返しており、本件バスは、本件事故の前後を通じて正常に運行されていたこと、が認められ、右認定を妨げるに足りる証拠はない。

3  よつて、被告らは本件バスの運行について注意を怠つていないし、本件バスに構造上の欠陥又は機能の障害はなかつたのである。

三  以上のとおり、本件事故については、被告石島に過失がなく、また、被告会社には自賠法三条但書の免責事由が存在するのであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告の被告らに対する本訴請求は失当として棄却を免れない。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 森眞樹)

別表 逸失利益

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例